実家の相続登記は3年以内。義務化で何が変わり、間に合わないときはどうするか
基準日 2026年9月8日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から申請が義務になりました。期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」で、正当な理由なく申請しなかった場合は10万円以下の過料の対象になります[1][2]。
見落としやすいのは、施行前の相続もさかのぼって対象になることです。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で登記がされていないものは、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記をする必要があります[2]。祖父母の代で止まっている名義がある場合、残り時間はあと1年半ほどです。
戸籍が揃わない、遺産分割がまとまらない、という理由で3年に間に合わない場合は「相続人申告登記」で義務だけを先に果たす道があります[3]。ただしこれは権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権の設定には別途、相続登記が必要です[3]。
結論の一覧表
| 論点 | 内容 | 期限・金額 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 相続登記の義務化 | 2024年4月1日施行 | 取得を知った日から3年以内/過料10万円以下 | [1][2] |
| 施行前の相続 | さかのぼって対象 | 2027年3月31日まで | [2] |
| 相続人申告登記 | 期限内に義務だけ履行する簡易な仕組み。単独申出・押印不要・登録免許税なし | 3年以内に申し出る | [3] |
| 遺産分割成立後 | 分割の内容で改めて登記が必要 | 成立の日から3年以内 | [3] |
| 住所・氏名の変更登記 | 2026年4月1日施行(既に施行済み) | 変更日から2年以内/過料5万円以下 | [4] |
| 遺産分割の期間制限 | 相続開始から10年経過後は法定相続分による | 10年 | [8] |
| 登録免許税 | 相続による所有権移転は0.4% | 価額100万円以下の土地は2027年3月31日まで非課税 | [9] |
| 相続土地国庫帰属制度 | 2023年4月27日開始。要件を満たせば土地を国庫へ | 負担金は10年分の標準的管理費用相当 | [5][6] |
なぜ義務化されたのか、そして実際に増えているのか
答え: 所有者不明土地を減らすための法改正で、相続登記の件数は義務化の前後で実際に増えています。
根拠:法務大臣は2025年(令和7年)4月4日の記者会見で、「相続登記の件数は、改正法成立前の令和2年度においては、約114万件でしたが、その後順調に増加し、令和5年度には150万件を超える状況となりました」と述べ、令和6年度は12月末までの9か月間で約120万件、前年度同期比で約9%の増加としています[10]。制度が実際に動いていることを示す数字です。なお、これは記者会見での言及値で、登記統計の確定値表そのものは当サイトでは確認できていません。
3年に間に合わないときの逃げ道──相続人申告登記
答え: 相続人であることを登記官に申し出れば、期限内の義務は果たしたことになります。ただし「登記が済んだ」わけではありません。
根拠:法務省は、相続登記の申請には被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集等が必要で期限内の申請が難しい場合があるとして、「期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合に簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして、『相続人申告登記』が新たに設けられました」と説明しています[3]。単独で申し出ることができ、押印・電子署名は不要で、登録免許税もかかりません[3]。
一方で法務省は、「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があります」としています[3]。また、遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に、分割の内容に沿った相続登記が別途必要になります[3]。あくまで時間を確保するための手段です。
2026年4月からは住所・氏名の変更登記も義務
答え: 引っ越しや結婚で登記名義人の住所・氏名が変わったら、2年以内に変更登記が必要です。
根拠:法務省は、住所等変更登記の申請義務化の施行日を令和8年(2026年)4月1日とし、「氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、その変更日から2年以内に変更の登記の申請をすることが義務付けられます」、正当な理由なく怠った場合は「5万円以下の過料の適用対象となります」と説明しています[4]。基準日時点で、すでに施行されています。
実家の名義が親のままで、親が施設に移って住民票を動かしている、といったケースはこちらに当たります。相続の話とは別に確認しておく必要があります。
遺産分割は「10年」で性質が変わる
答え: 相続開始から10年を過ぎると、原則として法定相続分での分割になります。
根拠:法務省のリーフレットは、「相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)による」としています[8]。具体的相続分とは、特別受益や寄与分を考慮した相続分のことです。つまり、「長男が家業を支えてきた」「次男が生前に住宅資金の援助を受けている」といった事情を主張できる期間に、事実上の区切りがあります。
10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割請求をしていた場合など、例外の定めもあります[8]。話がまとまらないまま放置している相続がある場合は、この10年が来る前に動くかどうかが分岐点になります。
使い道のない土地をどうするか
答え: 相続土地国庫帰属制度がありますが、要件が厳しく、承認されても負担金がかかります。
根拠:法務省は「相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日から開始しています」とし、相続または遺贈で土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度と説明しています[5]。建物や工作物がある土地、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは対象外とされています[5]。
承認されると負担金の納付が必要で、法務省は「土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた者は、承認された土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額の負担金を納付しなければなりません」としています[6]。金額は宅地・農地・森林など土地の種目や区域によって異なり、法務省のページに算定資料が掲載されています。実際の運用状況は、法務省の統計(令和8年7月31日現在)で申請5,863件、帰属3,008件です[7]。承認までのハードルがあることが読み取れます。
よくある質問
Q. 「正当な理由」とは何ですか? A. 法務省は「相続登記をしないことについて正当な理由がない場合には、過料の対象となります」としており、過料額は10万円以下の範囲で裁判所が決定するとしています[2]。個別の該当性は事案によるため、判断に迷う場合は法務局または司法書士にご相談ください。当サイトは登記の個別判断を行いません。
Q. 費用はいくらかかりますか? A. 登録免許税は相続による所有権移転登記で価額の0.4%です。ただし、価額100万円以下の土地については、租税特別措置法により令和9年(2027年)3月31日まで登録免許税が課されません[9]。また、相続人が相続登記を受ける前に死亡した場合の中間の登記についても、同じ期限まで非課税とされています[9]。免税を受けるには申請書にその旨の記載が必要です[9]。司法書士に依頼する場合の報酬は別途かかります。
Q. 実家を売る予定がないなら、放っておいてよいですか? A. 義務は売る予定の有無と関係なく生じます。放置すると相続人がさらに枝分かれし、必要な同意の人数が増えて手続が重くなります。10年の期間制限も進みます[8]。
Q. どこに相談すればよいですか? A. 登記そのものは法務局と司法書士の領域です。当サイトは登記の代理や個別の法律判断は行いません。相続全体の中で「保険や現金をどう配置しておくか」の部分については、当社での相談を承っています。
Q. 保険は相続対策になりますか? A. 死亡保険金には相続税の非課税枠があり、受取人を指定できるため分割協議を経ずに現金が渡るという性質があります。ただし有効かどうかは資産の内訳と家族構成によります。当サイトの記事では商品の勧誘は行いません。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html、2026-09-08参照)
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html、2026-09-08参照)
- 法務省「相続人申告登記について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html、2026-09-08参照)
- 法務省「住所等変更登記の申請義務化について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html、2026-09-08参照)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html、2026-09-08参照)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html、2026-09-08参照)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html、2026-09-08参照)
- 法務省「遺産分割に関する民法のルールが変わります」(https://www.moj.go.jp/content/001372212.pdf、2026-09-08参照)
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html、2026-09-08参照)
- 法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要」(令和7年4月4日、https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00603.html、2026-09-08参照)