配偶者居住権とは何か。家に住み続けながら、他の財産も受け取るための制度
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
配偶者居住権は、残された配偶者が自宅に住み続けながら、預貯金など他の財産も受け取れるようにするための制度です。法務省は制度の背景として、配偶者が居住建物を取得する場合には他の財産を受け取れなくなってしまうという問題を挙げ、この制度によって自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになるとしています[3]。遺産分割における選択肢の一つとして、または被相続人の遺言等によって取得させることができ[3]、存続期間は終身または一定期間です[2]。取得したらできるだけ早く登記手続をする必要があります[1]。これとは別に、配偶者短期居住権という制度もあります。こちらは自動的に保護されるもので、遺産分割がまとまるか審判がされるまで、または被相続人が亡くなってから6か月間のいずれか長い期間に及びますが、登記することはできません[1]。いずれも令和2年4月1日に施行されています[1][2]。
結論の一覧表
| 項目 | 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 | 出典 |
|---|---|---|---|
| どう取得するか | 遺産分割における選択肢の一つとして、または被相続人の遺言等によって | 被相続人の所有する建物に居住していた配偶者が自動的に保護される。取得の手続きは不要 | [1][3] |
| 存続期間 | 終身または一定期間 | 遺産分割がまとまるか審判がされるまで、または被相続人が亡くなってから6か月間のいずれか長い期間 | [1][2] |
| 登記 | 取得したらできるだけ早く登記手続をする必要がある | 登記することはできない | [1] |
| 施行日 | 令和2年4月1日 | 令和2年4月1日 | [1][2] |
なぜ必要になったのか
答え: 自宅を相続すると、その分だけ他の財産の取り分が減ってしまうためです。
根拠:法務省は、配偶者が居住建物を取得する場合には他の財産を受け取れなくなってしまうという問題を挙げ、配偶者居住権によって、自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになるとしています[3]。
自宅の評価額が遺産の大半を占める家庭では、これが切実な問題になります。自宅を配偶者が相続すると、預貯金は子に回り、配偶者の手元に生活費が残らない。かといって自宅を売れば住む場所がなくなる。この板挟みを解くために、「住む権利」と「所有権」を分けられるようにしたのが配偶者居住権です。
配偶者は住む権利だけを取得し、所有権は子が取得する。住む権利は所有権より評価が低くなるため、その差額の分だけ配偶者は預貯金を多く受け取れる、という構図になります。
取得の仕方は二通り
答え: 遺産分割で決めるか、遺言などで被相続人が遺すかです。
根拠:法務省は、遺産分割における選択肢の一つとして、または被相続人の遺言等によって取得させることができるとしています[3]。法務省の別の資料でも、残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合で一定の要件を充たすときに、遺言または遺産分割協議で取得できるとされています[1]。
存続期間は終身または一定期間です[2]。終身にするか期間を区切るかは、遺産分割や遺言の内容によります。
要件の詳細や、自分の家庭で使えるかどうかの判断は、弁護士または司法書士にご確認ください。当サイトは法律の個別判断を行いません。
取得したら、早く登記する
答え: 法務省は、配偶者居住権を取得したらできるだけ早く登記手続をする必要があるとしています。
根拠:法務省は「配偶者居住権を取得したらできるだけ早く登記手続をする必要があります」と明記しています[1]。
権利があっても、登記していなければ第三者に主張できません。建物の所有権を取得した子がその建物を売却してしまった場合、登記がなければ買主に対して住む権利を主張できないおそれがあります。家族の間では話がついていても、その先で権利関係が動くことはあります。
なお、相続によって不動産を取得した場合の相続登記そのものも、令和6年4月1日から義務になっています。相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内が期限で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です[4]。詳しくは実家の相続登記は3年以内をご覧ください。
短期のほうは、何もしなくても発生する
答え: 配偶者短期居住権は自動的に保護される権利で、取得の手続きは要りません。ただし登記はできず、期間も限られます。
根拠:法務省は、配偶者短期居住権について、被相続人の所有する建物に居住していた配偶者が自動的に保護される権利であり、別途の取得手続きは不要としています[1]。存続期間は、遺産分割がまとまるか審判がされるまで、または被相続人が亡くなってから6か月間のいずれか長い期間です[1]。そして「配偶者短期居住権は、登記することはできません」とされています[1]。
役割が違います。短期のほうは、相続が起きた直後に住む場所を失わないための緊急の保護です。遺産分割の話し合いが長引いても、少なくとも6か月は住めます。長期にわたって住み続けるためには、配偶者居住権を取得する必要があります。
よくある質問
Q. 配偶者居住権は、いつからの相続に使えますか? A. 令和2年4月1日に施行されています[1][2]。適用される相続の範囲については法務省の資料をご確認ください。
Q. 自宅が夫婦の共有名義の場合も使えますか? A. 成立の要件の詳細は本記事で参照した資料の範囲を超えるため扱いません。弁護士または司法書士にご確認ください。
Q. 配偶者居住権はいくらと評価されますか? A. 相続税の課税価格を計算する際の評価方法については、本記事で参照した資料に記載がないため扱いません。税理士にご確認ください。相続税がかかるかどうかの出発点については生前贈与は7年さかのぼるで基礎控除に触れています。
Q. 子が所有者になった場合、固定資産税は誰が払いますか? A. 本記事で参照した資料に記載がないため扱いません。市区町村および専門家にご確認ください。
Q. 住む場所と生活費のバランスは、どう考えればよいですか? A. 配偶者居住権は、遺された配偶者の住まいと手元資金を両立させるための制度です。ただし制度を使っても不足する場合はあります。生命保険で現金を用意しておく方法を含め、ご家庭の事情に合わせた整理は保険の相談についてからご相談ください。遺族年金の見込みは遺族年金はいくら出るかをご覧ください。
出典
- 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00028.html、2026-09-23参照)
- 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html、2026-09-23参照)
- 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」(相続法改正。https://www.moj.go.jp/content/001263589.pdf、2026-09-23参照)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html、2026-09-23参照)