親の介護費用は何で決まるか。自己負担割合、支給限度額、高額介護サービス費の三つ
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
介護にかかる自己負担は、三つの仕組みの組み合わせで決まります。一つ目が自己負担割合で、原則1割、合計所得金額160万円以上かつ年金収入とその他合計所得金額の合計が単身280万円以上(夫婦346万円以上)だと2割、合計所得金額220万円以上かつ同じ合計が単身340万円以上(夫婦463万円以上)だと3割です[1]。二つ目が区分支給限度基準額で、居宅サービスの1か月の上限が要介護度ごとに決まっており、要介護5で362,170円、要支援1で50,320円です[2]。この枠を超えて使った分は保険が効かず全額自己負担になります。三つ目が高額介護サービス費で、1か月の自己負担が一定額を超えると超過分が払い戻されます。上限は世帯の課税状況で分かれ、課税所得380万円未満の世帯で44,400円、市町村民税非課税世帯で24,600円です[2]。つまり「際限なくかかる」わけではありませんが、限度額を超えた分と、施設の食費・居住費は別勘定です。
結論の一覧表
| 仕組み | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 自己負担割合(原則) | 1割 | [1] |
| 2割になる基準 | 合計所得金額160万円以上、かつ年金収入+その他合計所得金額が単身280万円以上・夫婦346万円以上 | [1] |
| 3割になる基準 | 合計所得金額220万円以上、かつ年金収入+その他合計所得金額が単身340万円以上・夫婦463万円以上 | [1] |
| 区分支給限度基準額(1か月) | 要支援1:50,320円/要支援2:105,310円/要介護1:167,650円/要介護2:197,050円/要介護3:270,480円/要介護4:309,380円/要介護5:362,170円 | [2] |
| 高額介護サービス費の上限(月額) | 課税所得690万円以上:140,100円/課税所得380万〜690万円:93,000円/課税所得380万円未満:44,400円/市町村民税非課税世帯:24,600円/生活保護受給者等:15,000円(いずれも世帯単位。一部は個人単位の上限あり) | [2] |
| 被保険者 | 第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳から64歳の医療保険加入者 | [1] |
一つ目:親の所得で、負担割合が変わる
答え: 原則1割ですが、所得が一定以上あると2割または3割になります。判定は本人の所得と、世帯の年金収入等の合計の両方で行われます。
根拠:厚生労働省の資料では、2割負担となるのは合計所得金額160万円以上で、かつ年金収入とその他合計所得金額の合計が単身世帯で280万円以上、夫婦世帯で346万円以上の場合とされています[1]。3割負担となるのは合計所得金額220万円以上で、かつ同じ合計が単身世帯で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上の場合です[1]。
現役時代の収入ではなく、今の所得で決まります。年金に加えて不動産収入がある、退職金を運用して配当がある、といった場合に2割・3割に上がることがあります。判定は毎年行われるため、年によって割合が変わることもあります。正確な判定は市区町村から届く介護保険負担割合証をご確認ください。
二つ目:使える量に上限がある。超えた分は全額自己負担
答え: 要介護度ごとに、1か月に保険が使えるサービス量の上限(区分支給限度基準額)が決まっています。超えて使った分には保険が効きません。
根拠:居宅サービスの1か月あたりの区分支給限度基準額は、要支援1が50,320円、要支援2が105,310円、要介護1が167,650円、要介護2が197,050円、要介護3が270,480円、要介護4が309,380円、要介護5が362,170円です[2]。
ここが誤解されやすいところです。「1割負担だから安い」と思っていると、限度額を超えた分は10割負担になります。たとえば要介護2の親が、デイサービスと訪問介護を組み合わせて197,050円[2]の枠を使い切り、さらにショートステイを足すと、その追加分は全額自己負担です。ケアマネジャーが月ごとの利用計画を組むのは、この枠の中に収めるためでもあります。
親の状態が変わって必要なサービスが増えたとき、この枠が先に効いてきます。要介護度の区分変更申請という手続きがあるので、状態が変わったと感じたら担当のケアマネジャーにご相談ください。
三つ目:月の自己負担には上限がある
答え: 1か月の自己負担額が一定額を超えると、超えた分が高額介護サービス費として払い戻されます。上限は世帯の課税状況で分かれます。
根拠:高額介護サービス費の負担上限額(月額)は、課税所得690万円以上の世帯が140,100円、課税所得380万円以上690万円未満の世帯が93,000円、課税所得380万円未満の世帯が44,400円、市町村民税非課税世帯が24,600円、生活保護受給者等が15,000円とされています[2]。市町村民税非課税世帯のうち一定の要件に当たる場合は、世帯の上限とは別に個人単位で15,000円の上限が設けられています[2]。
自動的に払い戻されるわけではなく、多くの市区町村では初回に申請が必要です。一度申請すれば以後は自動で振り込まれる運用が一般的ですが、扱いは市区町村によります。お住まいの市区町村にご確認ください。
上限の外にある費用に注意する
答え: 施設に入ったときの食費と居住費、日用品費などは、ここまでの三つの仕組みの外側です。
根拠:区分支給限度基準額は居宅サービスの1か月あたりの上限として設定されているものです[2]。高額介護サービス費も介護サービスの自己負担を対象とした仕組みです[2]。
つまり、特別養護老人ホームや老人保健施設に入った場合の食費・居住費は、これらの上限とは別に発生します。所得が低い場合には負担限度額認定という軽減制度があります。要件(所得段階と預貯金等の資産)と軽減後の金額は施設の食費と居住費は上限の外にあるで扱っています。
家計への影響を見積もるときは、「介護保険の自己負担はいくらまで」と「それ以外に毎月いくら出ていくか」を分けて考えると、実態に近い数字になります。
よくある質問
Q. 親の負担割合はどこで確認できますか? A. 市区町村から交付される介護保険負担割合証に記載されています。判定の基準は厚生労働省の資料のとおりです[1]。
Q. 40代でも介護保険を使えますか? A. 第2号被保険者は40歳から64歳の医療保険加入者とされています[1]。ただし利用できる場合は限られるため、市区町村にご確認ください。
Q. 高額療養費と高額介護サービス費は別ですか? A. 別の制度です。医療の自己負担は高額療養費、介護の自己負担は高額介護サービス費で、それぞれ上限が設けられています。両方を1年単位で合算する高額医療・高額介護合算療養費という仕組みもあり、施設の食費と居住費は上限の外にあるで扱っています。
Q. 介護が始まると、親の口座からお金が動かせなくなると聞きました。 A. 認知症で判断能力が低下した場合の口座の取扱いは親が認知症になると銀行口座はどうなるかで扱っています。介護費用の支払い口座をどうするかは、早い段階で家族内で決めておくと動きやすくなります。
Q. 介護費用に備える保険はありますか? A. 公的介護保険で足りない部分を民間の保険で備える考え方があります。どこまで備えるかは、親の資産、きょうだいの状況、想定する介護の期間で変わります。考え方の整理は保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(令和7年7月。https://www.mhlw.go.jp/content/001512842.pdf、2026-09-23参照)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム 介護保険の解説 サービスにかかる利用料」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html、2026-09-23参照)