実家に手すりを付けるなら、工事の前に申請する。住宅改修は生涯20万円、福祉用具は借りるものと買うもの
基準日 2026年9月26日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
介護保険の住宅改修の支給限度基準額は、生涯20万円です[1]。要支援・要介護の区分にかかわらず定額で、区分が重いほど枠が増えるという仕組みではありません[1]。対象になる改修は、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、その他これらに付帯して必要となる住宅改修の6種類です[1]。**重要なのは申請の順番です。**原則として工事の前に申請が必要で、やむを得ない事情がある場合に限って工事完成後の申請が認められます[2]。支給は住宅改修費の9割相当額の償還払いです[2]。福祉用具は、借りる「福祉用具貸与」11種目と、買う「特定福祉用具販売」6種目に分かれます[1]。販売は原則年間10万円が支給限度基準額です[1]。負担割合はどちらも原則9割給付で、所得に応じて8割・7割となります[1]。なお、要介護状態区分が3段階上がったときと、転居したときは、再度20万円までの支給限度基準額が設定されます[2]。
結論の一覧表
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 住宅改修の支給限度基準額 | 生涯20万円(要支援・要介護区分にかかわらず定額) | [1] |
| 対象となる改修 | 手すりの取付け/段差の解消/床又は通路面の材料の変更/引き戸等への扉の取替え/洋式便器等への便器の取替え/これらに付帯して必要となる改修 | [1] |
| 申請の時期 | 原則として工事の前。やむを得ない事情がある場合は工事完成後も可 | [2] |
| 必要書類 | 支給申請書/住宅改修が必要な理由書/工事費見積もり書/完成予定の状態がわかるもの(写真又は図) | [2] |
| 支給の方法 | 住宅改修費の9割相当額を償還払い | [2] |
| 20万円の枠が再設定される場合 | 要介護状態区分が3段階上がったとき/転居したとき | [2] |
| 福祉用具貸与の種目 | 車いす(付属品含む)・特殊寝台(付属品含む)・床ずれ防止用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト・自動排泄処理装置 | [1] |
| 特定福祉用具販売の種目 | 腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部品・排泄予測支援機器・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具の部分 | [1] |
| 販売の支給限度基準額 | 原則年間10万円 | [1] |
| 貸与と販売の選択制 | 歩行補助つえ・歩行器・スロープ | [1] |
| 利用者負担 | 保険給付は原則9割、所得に応じて8割・7割 | [1] |
工事の前に申請する。ここを外すと出ない
答え: 原則として工事の前に申請が必要です。やむを得ない事情がある場合に限り、工事完成後の申請が認められます[2]。
根拠:厚生労働省の資料は、住宅改修費の支給について、やむを得ない事情がある場合には工事完成後に申請することができるとしています[2]。裏を返せば、原則は事前申請です。
これが一番の落とし穴です。親が退院してくるので先に手すりを付けてしまった、という順番で動くと、支給されないおそれがあります。工務店に見積もりを頼む前に、まずケアマネジャーか市区町村の窓口に連絡してください。
必要な書類は、支給申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費見積もり書、住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真又は簡単な図を用いたもの)です[2]。「理由書」が要るということは、なぜその改修が必要かを説明できる人が関わる前提の制度だということです。認定を受けていればケアマネジャーが窓口になります。認定そのものがまだなら、先に要介護認定の申請が要ります。流れは要介護認定はどう進むのかをご覧ください。
支給は、実際の住宅改修費の9割相当額が償還払いで支給されます[2]。いったん全額を立て替える形が原則です。
20万円は「生涯」の枠。ただし2つだけ例外がある
答え: 支給限度基準額は生涯20万円で、要支援・要介護の区分にかかわらず定額です[1]。
根拠:厚生労働省の資料は、住宅改修の支給限度基準額を「生涯20万円(要支援、要介護区分にかかわらず定額)」としています[1]。
要介護5になれば枠が増える、という仕組みではありません。一度使い切れば、原則としてそれで終わりです。だからこそ、最初の工事で何をどこまでやるかの設計が効いてきます。
例外は2つあります。要介護状態区分が重くなったとき(3段階上昇時)と、転居した場合は、再度20万円までの支給限度基準額が設定されます[2]。3段階というのは、たとえば要支援2から要介護3へ、といった上がり方です。1段階や2段階では再設定されません。
この20万円の枠[1]は、複数回に分けて使うこともできます。限度基準額の範囲内なら、最初に玄関の段差だけ直して、あとから浴室の手すりを足す、といった使い方が可能です。
対象は6種類。「付帯して必要となる工事」が効く
答え: 手すりの取付け、段差の解消、床又は通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、およびこれらに付帯して必要となる住宅改修です[1]。
根拠:厚生労働省の資料は、対象となる住宅改修として次の6つを挙げています[1]。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
6番目が実務では効きます。手すりを付けるために壁を補強する、便器を替えるために給排水設備を直す、といった工事が、単独では対象外でも付帯工事として認められる場合があります。どこまでが付帯にあたるかは個別の判断になるため、見積もりの段階で市区町村に確認してください。
逆に、対象になりにくいのは「使いやすくするための改修」です。浴室を広くする、キッチンを入れ替えるといった工事は、この6種類には当てはまりません。
福祉用具は、借りるものと買うものが分かれている
答え: 貸与が11種目、販売が6種目です。販売は原則年間10万円が支給限度基準額です[1]。
根拠:厚生労働省の資料は、福祉用具貸与の対象種目を、車いす(付属品含む)・特殊寝台(付属品含む)・床ずれ防止用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト・自動排泄処理装置としています[1]。特定福祉用具販売の対象種目は、腰掛便座・自動排泄処理装置の交換可能部品・排泄予測支援機器・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具の部分で、原則年間10万円を支給限度基準額としています[1]。
分かれ方には理屈があります。**肌に直接触れるもの、他の人が使ったものを再利用しにくいものが「販売」です。**入浴補助用具や腰掛便座が買い取りなのはそのためです。それ以外の、繰り返し使える大型の用具は貸与になります。
手すりとスロープが貸与の側にあるのは、工事をしない据置型・置き型を指すからです。壁に取り付ける工事をするなら住宅改修、置くだけなら福祉用具貸与、という分かれ方になります。同じ「手すり」でも制度が違うので、どちらで進めるかはケアマネジャーに相談してください。
令和6年度からは、一部の福祉用具について貸与と販売の選択制が導入されています。対象は歩行補助つえ、歩行器、スロープです[1]。長く使うなら買ったほうが安い、という場合に選べるようになりました。
お金の全体像のなかでの位置づけ
答え: 利用者負担は原則1割(一定以上所得者の場合は2割又は3割)です[3]。
根拠:厚生労働省は、利用者負担を介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割又は3割)としています[3]。福祉用具・住宅改修についても、保険給付は原則9割、所得に応じて8割・7割支給とされています[1]。
住宅改修の20万円[1]は、月ごとの区分支給限度基準額とは別枠です。訪問介護やデイサービスを限度いっぱいまで使っていても、住宅改修の枠は独立して使えます。この点は、費用の見通しを立てるときに知っておく価値があります。月ごとの限度額と自己負担の決まり方は親の介護費用は何で決まるかで扱っています。
よくある質問
Q. 工事が終わってから申請してもだめですか? A. やむを得ない事情がある場合には、工事完成後に申請することができるとされています[2]。何がやむを得ない事情にあたるかは市区町村の判断になるため、先に窓口へご相談ください。
Q. 20万円を超えた分はどうなりますか? A. 支給限度基準額は生涯20万円です[1]。超えた分は全額自己負担になります。
Q. 賃貸住宅でも使えますか? A. 住宅の所有者の承諾など、個別の取扱いは市区町村によって案内が異なります。窓口にご確認ください。
Q. 要介護状態区分が3段階上がる、とはどういう意味ですか? A. 厚生労働省の資料では、要介護状態区分が重くなったとき(3段階上昇時)に再度20万円までの支給限度基準額が設定されるとされています[2]。具体的な数え方は市区町村にご確認ください。
Q. 福祉用具を買うか借りるか、選べますか? A. 歩行補助つえ、歩行器、スロープについては、貸与と販売の選択制が導入されています[1]。それ以外の種目は、貸与か販売かが制度上決まっています[1]。
Q. 認定を受ける前に工事してしまいました。 A. 介護保険のサービスは要介護認定を前提とした仕組みです[4]。取扱いは市区町村にご確認ください。
Q. 改修費の自己負担分に備える方法はありますか? A. 住宅改修も福祉用具も自己負担が残り、20万円の枠を超える工事は全額自己負担です[1]。どこまで貯蓄で持ち、どこから民間の保険で備えるかは家庭ごとに違います。考え方の整理は保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第3回 参考資料2。https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001668164.pdf、2026-09-26参照)
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf、2026-09-26参照)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム 介護保険の解説 サービスにかかる利用料」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html、2026-09-26参照)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム 介護保険の解説 サービス利用までの流れ」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html、2026-09-26参照)