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役員退職金はいつ、いくらまで経費になるか。損金算入の時期と、分掌変更で出す場合

基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸

結論(要約回答)

役員退職金には、時期の論点と金額の論点があります。時期については、損金に算入されるのは原則として株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度で、実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その事業年度に算入することも認められています[1]。金額については、役員給与のうち不相当に高額な部分は損金の額に算入されません[2]。いくらまでなら相当かという基準は法令に金額で書かれておらず、当サイトでは公式に数値の目安を示した記載を確認できていません。また、退職していなくても、分掌変更によって役員としての地位または職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合は、退職給与として取り扱うことができるとされています[4]。受け取る側は退職所得として課税されますが、役員等勤続年数が5年以下の場合は2分の1課税の適用がありません[5]。

結論の一覧表

論点 内容 出典
損金算入の時期(原則) 株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度 [1]
損金算入の時期(例外) 実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その事業年度に算入することも認められる [1]
金額の上限 不相当に高額な部分は損金不算入。法令に金額の基準は示されていない [2]
分掌変更で出せる場合 地位または職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合 [4]
分掌変更の具体例 常勤役員が非常勤役員になった、取締役が監査役になった、分掌変更後の給与がおおむね50パーセント以上減少した [3]
受け取る側の課税 退職所得。退職所得控除は勤続20年以下が1年あたり40万円、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年) [5]
役員が5年以下で退職した場合 特定役員退職手当等として、2分の1課税の適用がない [5]

損金になるのは「決議で額が確定した期」

答え: 支払った期ではなく、株主総会の決議等で金額が具体的に確定した期が原則です。

根拠:国税庁は、役員退職金の損金算入時期について、原則として株主総会の決議等によってその額が具体的に確定した日の属する事業年度としています[1]。あわせて、法人が退職金を実際に支払った事業年度において損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められるとしています[1]。

つまり、決議した期に未払計上して損金にするか、支払った期に損金経理するか、どちらかを選べる形です。決算の着地を見ながら、どちらの期に落とすかを決めることになります。ただし後から都合よく動かせるものではなく、議事録の日付と経理処理が食い違っていると説明がつきません。決議の記録は残しておいてください。

金額の上限は、法令に数字で書かれていない

答え: 不相当に高額な部分は損金になりません。ただし「いくらまで」という金額の基準は、法令にも国税庁の公表資料にも数値では示されていません。

根拠:国税庁は、役員給与について、要件に該当するものであっても不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されないとしています[2]。役員退職給与についても、相当と認められる金額を超える部分が損金不算入になる仕組みです。

実務では、最終報酬月額に勤続年数と一定の倍率を掛ける方法が広く使われていますが、その倍率の水準を示した公式の記載を当サイトでは確認できていません。裁判例や実務書で語られる数字はありますが、公表された基準ではないため、本記事では数値を挙げません。金額を決める際は、顧問税理士に、同業・同規模の水準を含めて相談してください。当サイトは個別の税務判断を行いません。

退職しなくても出せる場合がある。ただし条件は重い

答え: 分掌変更によって役員としての地位または職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合は、退職給与として取り扱うことができるとされています。

根拠:法人税基本通達9-2-32は、法人が役員の分掌変更または改選による再任等に際してその役員に対し退職給与として支給した給与について、その分掌変更等によりその役員としての地位または職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができるとしています[4]。

国税庁は具体例として次を挙げています[3]。

  • 常勤役員が非常勤役員になったこと(代表権を有する者や、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)
  • 取締役が監査役になったこと(実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者などを除く)
  • 分掌変更の後の役員の給与がおおむね50パーセント以上減少したこと(実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)

いずれも括弧書きの除外が効いています。肩書を変えても実質的に経営の主要な地位に居続けている場合は、退職給与として扱えません。事業承継の場面でこの取扱いを使う場合、代表権の有無、決裁の実態、金融機関との関係など、実質がどう変わるのかを合わせて設計する必要があります。

受け取る側は退職所得。ただし5年以下は扱いが違う

答え: 退職所得として課税され、勤続年数に応じた退職所得控除があります。ただし役員等勤続年数が5年以下の場合、2分の1にする計算の適用がありません。

根拠:退職所得の金額は、収入金額から退職所得控除額を差し引いた額に2分の1を掛けて計算します[5]。退職所得控除額は、勤続20年以下の場合が40万円に勤続年数を掛けた額(80万円に満たない場合は80万円)、勤続20年超の場合は800万円に70万円と勤続年数から20年を引いた年数を掛けた額を加えた額です[5]。

ただし、役員等勤続年数が5年以下の人が受け取る特定役員退職手当等については、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額がそのまま退職所得の金額になり、2分の1にする計算の適用がありません[5]。短期間で役員に就任して退職金を受け取る形では、この扱いになります。

会社側で損金にできる金額と、受け取る側の手取りは別の計算です。会社の税負担だけを見て金額を決めると、個人側で想定より重くなることがあります。

よくある質問

Q. 退職金の原資は、どう準備しておくのがよいですか? A. 準備の方法には、社内に現金で留保する、小規模企業共済で経営者個人として積む、生命保険を使うなど複数の選択肢があります。それぞれ、会社の損金になるか個人の所得控除になるか、途中で解約したときにいくら戻るか、受け取り時にどう課税されるかが違います。考え方の整理は保険の相談についてからご相談ください。共済については小規模企業共済と経営セーフティ共済の違いで扱っています。

Q. 功績倍率はいくつが妥当ですか? A. 公式に示された数値を当サイトでは確認できていないため、本記事では数字を挙げません。顧問税理士にご確認ください。

Q. 分掌変更で退職金を出したあと、会長として残ってもよいですか? A. 残ること自体が問題になるのではなく、実質的に経営上主要な地位を占めているかどうかが判断の分かれ目です[3]。国税庁が挙げる例はいずれも、その場合を除く旨の括弧書きが付いています[3]。

Q. 死亡退職金はどうなりますか? A. 損金算入の時期や不相当に高額な部分の扱いは本記事のとおりですが、受け取る側の課税は退職所得ではなく相続税の対象になるなど、生前の退職金とは別の論点があります。当サイトでは公式の記載を確認していないため、本記事では扱いません。

出典

  1. 国税庁「タックスアンサーNo.5208 役員の退職金の損金算入時期」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5208.htm、2026-09-23参照)
  2. 国税庁「タックスアンサーNo.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm、2026-09-23参照)
  3. 国税庁「タックスアンサーNo.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5203.htm、2026-09-23参照)
  4. 国税庁「法人税基本通達 第7款 退職給与」9-2-32 役員の分掌変更等の場合の退職給与(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_07.htm、2026-09-23参照)
  5. 国税庁「タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm、2026-09-23参照)

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