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役員報酬はいつ決めるか。定期同額給与・事前確定届出給与と、期中に変えられる場合

基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸

結論(要約回答)

役員報酬は「いくらにするか」より「いつ決めるか」で税務上の扱いが変わります。毎月払う報酬を経費(損金)にするには、支給時期が1か月以下の一定期間ごとで各回が同額である定期同額給与に当てはめる必要があり、金額の改定は原則として会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行います[1]。この時期を過ぎて増額すると、上乗せした部分だけが損金に算入されません[5]。減額は、一時的な資金繰りや業績目標未達では認められず、経営状況が著しく悪化したなどのやむを得ない事情がある場合に限られます[4]。賞与にあたるものを役員に出すなら事前確定届出給与として、株主総会等の決議の日から1か月を経過する日(会計期間開始の日から4か月を経過する日のほうが早ければその日)までに税務署へ届け出ます[1][2]。届出と違う金額を払うと、その役員の分は事前確定届出給与として扱われません[6]。決算月から逆算して、株主総会の前に決めておく。これが実務のすべてです。

結論の一覧表

論点 内容 出典
損金にできる役員給与 定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与の3つ。いずれにも当たらないもの、および不相当に高額な部分は損金不算入 [1]
定期同額給与の形 支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、各支給時期の額が同額 [1]
改定できる時期 会計期間開始の日から3か月を経過する日等まで。ほかに臨時改定事由、業績悪化改定事由による減額 [1]
期中に増額した場合 上乗せして支給した部分が損金不算入(例:月20万円の増額を2か月分で40万円) [5]
減額が認められる事情 経営状況が著しく悪化したなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情。一時的な資金繰りの都合や業績目標値の未達は含まない [4]
事前確定届出給与の届出期限 決議の日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日 [1][2]
新設法人の届出期限 設立の日以後2か月を経過する日 [2]
届出と違う額を払った場合 その役員の給与は届出どおりでないものとして扱われる。他の役員の給与には影響しない [6]

なぜ「いくら」より「いつ」が効くのか

答え: 役員給与は、金額の多寡ではなく、決め方と時期が要件を満たすかどうかで損金になるかが分かれるからです。

根拠:法人税法上、役員に支給する給与のうち損金に算入されるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれかに該当するものに限られます[1]。従業員の給与のように「払ったから経費」とはなりません。これは、役員が自分の報酬額を自分で決められる立場にあるため、利益調整に使われないよう歯止めをかける趣旨の規定です。したがって、期の途中で「今期は利益が出そうだから報酬を増やす」という調整は、原則として通りません。

なお、要件に当てはまる給与であっても、不相当に高額な部分は損金に算入されません[1]。

定期同額給与は会計期間開始から3か月以内に決める

答え: 毎月の役員報酬は、会計期間開始の日から3か月を経過する日までに改定を済ませ、その後は事業年度を通じて同額で支給します。

根拠:定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます[1]。改定が認められるのは、会計期間開始の日から3か月を経過する日等までにされる改定のほか、役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更といった臨時改定事由による改定、そして業績悪化改定事由による減額改定です[1]。

3月決算なら6月末まで、12月決算なら3月末までが目安になります。多くの会社が定時株主総会で役員報酬を決議するのは、この期限の中に総会が収まるためです。決算の数字が固まる前に来期の報酬を決めることになるので、決算予測を早めに作っておくことが実務上の備えになります。

期中に増額すると、上乗せ分だけが損金不算入になる

答え: 改定できる時期を過ぎて増額した場合、報酬の全額ではなく、増額して上乗せした部分が損金不算入になります。

根拠:国税庁の質疑応答事例では、役員給与を月額50万円から70万円に増額した事例について、増額前の50万円の部分は引き続き定期同額給与として支給されているものと考えられ、上乗せして支給した部分の金額、この事例では20万円の2か月分にあたる40万円が損金不算入になるとされています[5]。

つまり、うっかり期中に上げてしまっても報酬そのものが否認されるわけではありません。ただし上乗せ分には法人税がかかり、受け取る側の所得税・社会保険料は満額にかかります。二重に負担する形になるため、時期を守るほうが結果的に軽くなります。

減額できるのは「業績悪化改定事由」があるときだけ

答え: 業績が思わしくないというだけでは減額できません。経営状況が著しく悪化したなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情が必要です。

根拠:法人税基本通達9-2-13は、業績悪化改定事由について「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する」と定めています[4]。

国税庁の「役員給与に関するQ&A」は、該当する場合として次の例を挙げています[3]。

  • 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  • 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  • 業績や財務状況または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
  • 主力製品に瑕疵があることが判明して、今後、多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合

共通しているのは、社内の判断だけで完結せず、株主・銀行・取引先といった第三者との関係で減額せざるを得なくなっている点です。減額を検討する段階で、協議の経緯や計画書を記録として残しておくことが、後から説明する材料になります。

賞与を出すなら事前確定届出給与。届出は決議から1か月以内

答え: 役員に賞与を出して損金にするには、支給前に金額と時期を決めて税務署へ届け出ます。期限は決議の日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日です。

根拠:事前確定届出給与とは、役員の職務につき、確定した額の金銭または確定した数の株式もしくは新株予約権を所定の時期に交付する旨の定めに基づいて支給する給与をいいます[1]。届出期限は、株主総会等の決議をした日(同日が職務の執行を開始する日より後である場合はその開始する日)から1か月を経過する日ですが、その日が職務執行期間の開始の日の属する会計期間開始の日から4か月を経過する日より後になる場合は、その4か月を経過する日となります[2]。新設法人の場合は、設立の日以後2か月を経過する日です[2]。提出先は納税地の所轄税務署長で、e-Taxまたは書面で提出します[2]。

臨時改定事由による場合は、その事由が生じた日から1か月を経過する日まで、業績悪化改定事由による減額の場合は、その決議をした日から1か月以内が期限として定められています[1]。

届出どおりに払わないと、その役員の分が届出給与として扱われない

答え: 届け出た金額と違う額を支給したり、支給しなかったりすると、その役員に対する給与は事前確定届出給与に該当しないものとして扱われます。

根拠:国税庁の質疑応答事例は、法人税法第34条第1項第2号が個々の役員に係る給与について規定しているものであることから、届出額と異なる支給をした役員以外の他の役員に対する給与には影響を与えないとしています[6]。裏を返せば、その役員の分については届出どおりでないものとして扱われるということです。

資金繰りが厳しくなったから減らす、という運用はできません。届け出た以上は支給できる金額を、支給時期の資金繰りを見込んだうえで決めておく必要があります。具体的な計算や自社の事案への当てはめは、顧問税理士にご確認ください。当サイトは個別の税務判断を行いません。

よくある質問

Q. 取締役に就任していない家族も「役員」になりますか? A. なる場合があります。法人税法上の役員には、取締役や監査役などのほか、使用人以外の者で法人の経営に従事しているもの、および同族会社の使用人のうち一定の株式所有割合の要件を満たす者が含まれます[7]。所有割合の要件は、株主グループの所有割合が50%を超えるグループに属し、その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超え、かつその使用人自身の所有割合が5%を超えること、とされています[7]。相談役や顧問も、実質的に経営に従事していれば役員として扱われます[7]。

Q. 社会保険料を下げたいので、期の途中で報酬を減らしたいのですが。 A. 保険料の軽減を目的とした減額は、法人税基本通達9-2-13がいう「やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」には当たりません[4]。定期同額給与の要件を外れた場合の取扱いは前述のとおりです。

Q. 一度決めた報酬は、翌期にはいくらでも変えられますか? A. 改定の時期を守れば変更できます。会計期間開始の日から3か月を経過する日等までの改定であれば、増額も減額も定期同額給与として扱われます[1]。ただし不相当に高額な部分は損金に算入されません[1]。

Q. 役員報酬をいくらにするかは、どう決めればよいですか? A. 税務上の要件は本記事のとおりですが、いくらが適切かは、会社の資金繰り、社長個人の生活費、退職金の準備、事業保障の考え方まで含めて決まります。金額そのものは税理士と、万一のときに会社と家族に残るお金の設計は当社のような保険代理店と、それぞれ分けて相談されるのが実際的です。

Q. 社長に万一のことがあったとき、会社の資金はどうなりますか? A. 役員報酬の設計とあわせて、借入金の返済原資、当面の運転資金、役員退職金の原資をどう手当てするかが論点になります。公的な保障だけでは足りない部分をどう埋めるかは、会社ごとに事情が異なります。考え方の整理は保険の相談についてからご相談ください。

出典

  1. 国税庁「タックスアンサーNo.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm、2026-09-23参照)
  2. 国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm、2026-09-23参照)
  3. 国税庁「役員給与に関するQ&A」(平成20年12月、平成24年4月改訂。https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf、2026-09-23参照)
  4. 国税庁「法人税基本通達 第3款 定期同額給与」9-2-13 経営の状況の著しい悪化に類する理由(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_03.htm、2026-09-23参照)
  5. 国税庁 質疑応答事例「定期給与の額を改定した場合の損金不算入額」(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/03.htm、2026-09-23参照)
  6. 国税庁 質疑応答事例「事前確定届出給与に関する届出書を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い」(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/13.htm、2026-09-23参照)
  7. 国税庁「タックスアンサーNo.5200 役員の範囲」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm、2026-09-23参照)

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