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働けなくなったとき、公的な支えはどこまで届くか。傷病手当金から障害年金まで

基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸

結論(要約回答)

時間軸で見ると、公的な支えは二段構えです。最初の1年6か月は健康保険の傷病手当金で、1日につき直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額が支給されます[1]。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までです[2]。そこから先は障害年金の領域になります。障害基礎年金は、令和8年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれの方で1級が1,059,125円、2級が847,300円で、子の加算額は1人につき243,800円(2人まで)、3人目以降は81,300円です[3]。障害厚生年金は、1級が報酬比例の年金額の1.25倍に配偶者の加給年金額243,800円を加えた額、2級が報酬比例の年金額に同額の加給年金額を加えた額、3級が報酬比例の年金額(最低保障額は昭和31年4月2日以後生まれで635,500円)です[4]。報酬比例部分は、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算されます[4]。ただし、同一の疾病等により障害年金の支給を受けるときは、傷病手当金との間で年金優先の併給調整が行われます[5]。

結論の一覧表

時期 制度 内容 出典
最初の3日間 — 待期。労務に服することができなくなった日から起算して3日 [1]
4日目から通算1年6か月 健康保険の傷病手当金 1日につき直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2 [1][2]
障害認定日以後 障害基礎年金 令和8年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれで1級1,059,125円・2級847,300円 [3]
同上 障害基礎年金の子の加算 1人につき243,800円(2人まで)、3人目以降は81,300円 [3]
同上 障害厚生年金1級 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額243,800円 [4]
同上 障害厚生年金2級 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額243,800円 [4]
同上 障害厚生年金3級 報酬比例の年金額(最低保障額は昭和31年4月2日以後生まれ635,500円、以前生まれ633,700円) [4]
計算の特例 300月みなし 厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算 [4]
併給 調整 同一の疾病等により障害年金等を受けるときは年金優先の併給調整 [5]

最初の1年6か月は傷病手当金

答え: 業務外の事由による療養で労務に服することができない場合、待期3日を経て、通算1年6か月まで支給されます。

根拠:厚生労働省は、傷病手当金について、業務外の事由による療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給されるとしています[1]。金額は1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額です[1]。令和4年1月1日からは、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までが対象となりました[2]。

役員の場合の論点は役員は傷病手当金を受けられるかで扱っています。業務中の怪我については、事業主は労災保険の対象外であるため、別の話になります。社長は労災の対象外をご覧ください。

その先は障害年金。ただし要件が違う

答え: 障害認定日に障害等級に該当することが要件で、傷病手当金とは判断の基準が異なります。

根拠:日本年金機構は、障害基礎年金の受給要件として、初診日が国民年金加入期間中などであること、障害認定日に障害等級表の1級または2級に該当していること、保険料納付要件を満たしていることの三つを挙げています[3]。障害厚生年金については、厚生年金保険の被保険者期間中に初診日があること、障害認定日に障害等級表の1級から3級のいずれかに該当していること、保険料納付要件を満たしていることが要件です[4]。

傷病手当金が「労務に服することができないか」で判断されるのに対し、障害年金は「障害等級に該当するか」で判断されます。1年6か月が過ぎても障害等級に該当しなければ、どちらも受けられない期間が生じます。ここが公的保障のいちばん薄い部分です。

保険料納付要件は、初診日の前日までに、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることとされています[3]。厚生年金についても同様で、初診日が令和18年3月末日までの場合は、65歳未満であれば直近1年間の保険料未納がなければよいとされています[4]。

障害厚生年金には300月みなしがある

答え: 厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されます。

根拠:日本年金機構は、報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算するとしています[4]。

遺族厚生年金と同じ考え方です。若くして障害の状態になった場合でも、一定の水準が確保されます。逆に、厚生年金に入っていない自営業の方には、この二階部分がありません。障害基礎年金だけになります。

法人を設立して厚生年金に加入していることが、この場面では効いてきます。社会保険の加入義務については法人をつくった時点で社会保険の加入義務が生じるをご覧ください。

3級には最低保障額がある

答え: 障害厚生年金3級には最低保障額が設定されています。障害基礎年金には3級がありません。

根拠:日本年金機構は、障害厚生年金3級を報酬比例の年金額とし、最低保障額を昭和31年4月2日以後生まれで635,500円、昭和31年4月1日以前生まれで633,700円としています[4]。障害基礎年金の対象は1級または2級です[3]。

つまり3級に該当する状態の場合、厚生年金に加入していれば障害厚生年金3級を受けられますが、国民年金だけの場合は何も出ません。ここも、法人と個人事業で差が出る部分です。

重なる場合は年金が優先される

答え: 同一の疾病等により障害年金等を受けるときは、年金優先の併給調整が行われます。

根拠:厚生労働省の資料は、傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病または負傷等により障害年金もしくは障害手当金の支給を受けるとき、または老齢年金の支給を受けるときは、年金優先の併給調整が行われるとしています[5]。

両方を満額で受け取れるわけではありません。障害年金の受給が決まった時点で、傷病手当金の扱いが変わります。

どこが空くのかを先に知っておく

答え: 待期の3日間、傷病手当金の3分の1、通算1年6か月を過ぎて障害等級に該当しない期間。この三つです。

根拠:待期は3日間で[1]、傷病手当金の水準は3分の2です[1]。支給期間は通算1年6か月です[2]。障害年金は障害等級に該当することが要件です[3][4]。

会社であれば、社長が働けない間も家賃、人件費、借入金の返済は続きます。個人としては生活費と教育費が続きます。公的な支えがこの形である以上、どこまで自己資金で持ち、どこから民間の保険で埋めるかという設計になります。

金額の目安が分かれば、必要な備えの大きさも見えてきます。ご自身の標準報酬月額と厚生年金の加入期間を確認したうえで、整理は保険の相談についてからご相談ください。

よくある質問

Q. 障害認定日とはいつですか? A. 日本年金機構は、障害認定日に障害等級表に該当していることを要件としています[3]。認定日の定め方については日本年金機構のページでご確認ください。

Q. あとから症状が悪化した場合は請求できますか? A. 事後重症による請求という仕組みがあり、症状が悪化したあと、請求日の翌月から受給できるとされています[3]。65歳の前々日までに申請が必要です[3]。

Q. 遡って受け取れますか? A. 障害認定日による請求では、認定日の翌月分から受給でき、遡及は5年分までとされています[3]。

Q. 自営業と会社員で、どれくらい違いますか? A. 障害基礎年金は共通ですが、障害厚生年金は厚生年金の加入が前提です[4]。3級に該当する状態の場合、国民年金だけでは支給されません[3][4]。同じ構造の違いは遺族年金にもあります。遺族年金はいくら出るかをご覧ください。

Q. 従業員向けにも同じ整理ができますか? A. 傷病手当金と障害年金の仕組みは共通です。ただし業務中の災害については、従業員は労災保険で保護されます[1]。業務災害と通勤災害の区別は業務災害と通勤災害は何が違うかで扱っています。

出典

  1. 厚生労働省保険局「傷病手当金について」(第127回社会保障審議会医療保険部会 資料1、令和2年3月26日。https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000619554.pdf、2026-09-23参照)
  2. 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html、2026-09-23参照)
  3. 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html、2026-09-23参照)
  4. 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html、2026-09-23参照)
  5. 厚生労働省「傷病手当金について」(第132回社会保障審議会医療保険部会 資料1-3、令和2年10月28日。https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000688661.pdf、2026-09-23参照)

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