法人をつくった時点で、社会保険の加入義務が生じる。社長ひとりでも同じ
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
株式会社などの法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります[1]。従業員がいなくても、社長ひとりの会社でも同じです。個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員がいる場合が対象で、農林漁業やサービス業など一部の業種は除かれます[1]。令和4年10月からは、法律・会計業務を行う士業の個人事業所で常時5人以上を雇用している場合も対象になっています[1]。強制適用の要件を満たさない事業所でも、従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ適用を受けられます[1]。被保険者になるのは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方で、国籍や性別、年金の受給の有無は問いません[1]。手続きの期限は短く、新規適用の届出は事実発生から5日以内です[2]。法人を設立したら、登記のあとすぐに動く必要があります。
結論の一覧表
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 法人事業所 | 株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)は強制適用 | [1] |
| 個人事業所 | 常時5人以上の従業員がいる場合が対象。農林漁業やサービス業などの業種は除く | [1] |
| 士業の個人事業所 | 令和4年10月から、法律・会計業務を行う士業で常時5人以上雇用している場合も対象 | [1] |
| 任意適用事業所 | 従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることで適用 | [1] |
| 被保険者 | 適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方。国籍や性別、年金の受給の有無を問わない | [1] |
| 短時間労働者(4分の3基準) | 週の所定労働時間および月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上 | [1] |
| 短時間労働者(拡大適用) | 特定適用事業所で、週20時間以上、月額8.8万円以上の賃金、学生でないことのすべてを満たす場合 | [1] |
| 新規適用の届出期限 | 事実発生から5日以内 | [2] |
法人なら、社長ひとりでも加入義務がある
答え: 株式会社などの法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて強制適用事業所です。
根拠:日本年金機構は、強制適用事業所として「株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)」を挙げています[1]。
「従業員を雇ってから考えればよい」という理解は、法人については当てはまりません。設立して役員報酬を出すのであれば、その時点で健康保険・厚生年金保険の対象です。個人事業から法人成りした場合、それまで国民健康保険と国民年金だった方が、厚生年金と協会けんぽ等に切り替わります。
個人事業所の場合は扱いが違い、常時5人以上の従業員がいる場合が対象で、農林漁業やサービス業などの業種は除かれます[1]。令和4年10月からは、法律・会計業務を行う士業の個人事業所で常時5人以上を雇用している場合も対象になりました[1]。
届出は5日以内
答え: 新規適用の届出は、事実発生から5日以内に行います。
根拠:日本年金機構は、新規適用の手続きについて、事実発生から5日以内に届け出る必要があるとしています[2]。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です[2]。
添付書類として、法人事業所の場合は法人(商業)登記簿謄本(コピー不可、提出日から90日以内に発行されたもの)、事業主が法人である場合は法人番号指定通知書等のコピーが必要とされています[2]。事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、賃貸借契約書のコピーなど所在地を確認できる書類の追加提出が求められます[2]。
登記簿謄本は取得に日数がかかります。5日以内という期限から逆算すると、設立登記が完了した時点で謄本を取りに行く動きが要ります。
誰が被保険者になるか
答え: 適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方です。短時間労働者には別の基準があります。
根拠:日本年金機構は、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず厚生年金保険の被保険者になるとしています[1]。
短時間労働者については、週の所定労働時間および月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります[1]。この基準を満たさない場合でも、特定適用事業所においては、週20時間以上、月額8.8万円以上の賃金、学生でないことのすべてを満たす場合に被保険者になります[1]。
パート・アルバイトを雇う場合、労働時間の設計がそのまま保険料の負担に跳ね返ります。人件費の計画を立てるときは、賃金だけでなくこの基準を織り込む必要があります。
役員報酬の決め方と連動している
答え: 保険料は報酬の額で決まるため、役員報酬をいくらにするかは、税金だけでなく保険料の話でもあります。
根拠:法人の事業所は事業主のみの場合を含めて強制適用事業所であり[1]、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方が被保険者になります[1]。
役員報酬は、原則として事業年度開始から3か月以内に決めて期中は変えられません。その決定が、法人税の損金算入だけでなく、社会保険料の水準も決めます。報酬を上げれば会社と個人の双方で保険料が増え、下げれば将来受け取る年金額に影響します。役員報酬の決め方は役員報酬はいつ決めるかで扱っています。
なお、保険料を下げることだけを目的に期中で報酬を減額することは、法人税の側で認められません。減額できる事情は限られています。
よくある質問
Q. 役員報酬をゼロにすれば、加入しなくてよいですか? A. 被保険者となるかどうかの判断については、報酬の有無を含めて年金事務所にご確認ください。本記事で参照した資料には、報酬額による除外の記載がありません。
Q. 従業員がいない会社でも届出は必要ですか? A. 日本年金機構は、強制適用事業所に「株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)」を挙げています[1]。
Q. 70歳を過ぎたらどうなりますか? A. 被保険者は70歳未満の方とされています[1]。70歳以降の取扱いについては年金事務所にご確認ください。
Q. 遅れて届け出るとどうなりますか? A. 届出期限は事実発生から5日以内とされています[2]。遅延した場合の取扱いは管轄の年金事務所にご確認ください。
Q. 社会保険だけで、社長の万一に備えられますか? A. 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で、被保険者期間が300月未満なら300月とみなして計算されます。金額の目安は遺族年金はいくら出るかをご覧ください。会社の借入金の返済や運転資金まで含めると、公的保障だけでは足りない部分が出ます。整理は保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html、2026-09-23参照)
- 日本年金機構「新規適用の手続き」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150311.html、2026-09-23参照)