業務災害と通勤災害は何が違うか。寄り道をした時点で通勤ではなくなる
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
業務災害とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害または死亡をいい、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることが要件です[1]。所定労働時間内や残業時間内に事業場施設内において業務に従事している場合は、特段の事情がない限り業務災害と認められます[1]。出張や社用での外出により事業場施設外で業務に従事している場合も、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的には業務災害と認められます[1]。通勤災害の「通勤」は、住居と就業の場所との間の往復、就業の場所から他の就業の場所への移動、単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を指し、これらを合理的な経路および方法により行うことが必要で、業務の性質を有するものは除かれます[1]。そして、経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は通勤となりません[1]。ただし日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、逸脱または中断の間を除いて通勤となります[1]。
結論の一覧表
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 業務災害の定義 | 業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害または死亡。業務と傷病等との間に一定の因果関係があること | [1] |
| 就業中 | 所定労働時間内や残業時間内に事業場施設内において業務に従事している場合は、特段の事情がない限り業務災害 | [1] |
| 休憩時間 | 私的行為による災害は対象外。ただし施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害は業務災害 | [1] |
| 事業場外 | 出張や社用での外出中は、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的には業務災害 | [1] |
| 通勤の範囲 | 住居と就業の場所との間の往復/就業の場所から他の就業の場所への移動/単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動 | [1] |
| 通勤の方法 | 合理的な経路および方法により行うこと。業務の性質を有するものは除く | [1] |
| 逸脱・中断 | 逸脱または中断の間およびその後の移動は通勤とならない | [1] |
| 例外 | 日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、逸脱または中断の間を除き通勤となる | [1] |
| 例外に当たる行為 | 日用品の購入、職業訓練の受講、選挙の投票、医療の受診、介護 | [1] |
業務災害は「因果関係」で判断する
答え: 業務上の事由による傷病等であること、つまり業務と傷病等との間に一定の因果関係があることが要件です。
根拠:厚生労働省は、業務災害を「業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡」とし、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることを要件としています[1]。
判断の場面ごとに整理されています。所定労働時間内や残業時間内に事業場施設内において業務に従事している場合は、特段の事情がない限り業務災害と認められます[1]。休憩時間中は、事業場施設内にいても実際に業務をしていないため、私的行為による災害は対象外ですが、施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害は業務災害となります[1]。出張や社用での外出により事業場施設外で業務に従事している場合は、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的には業務災害と認められます[1]。
出張中の扱いが広いのが特徴です。移動中も含めて業務に従事している状態とみなされるため、宿泊先での災害なども対象になり得ます。
通勤は「合理的な経路および方法」に限られる
答え: 住居と就業の場所との間の往復などを、合理的な経路および方法で行う移動が通勤です。
根拠:厚生労働省は、通勤を、住居と就業の場所との間の往復、就業の場所から他の就業の場所への移動、単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動とし、これらを合理的な経路および方法により行うことが必要で、業務の性質を有するものは除かれるとしています[1]。
「業務の性質を有するもの」が除かれるのは、それが通勤災害ではなく業務災害になるからです。たとえば社用車で取引先へ直行する移動は、通勤ではなく業務の一部として扱われることになります。
寄り道をした時点で、通勤ではなくなる
答え: 経路を逸脱し、または中断した場合、その間およびその後の移動は通勤になりません。
根拠:厚生労働省は「経路を逸脱し、又は中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は通勤とはなりません」としています[1]。
重要なのは「その後の移動」も含まれる点です。帰り道に寄り道をすると、そこから自宅までの移動も通勤ではなくなります。
ただし例外があります。日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、逸脱または中断の間を除いて通勤となります[1]。該当する行為として、日用品の購入、職業訓練の受講、選挙の投票、医療の受診、介護が挙げられています[1]。
つまり、スーパーで夕食の買い物をして帰る場合は、店にいる間を除いて通勤のままです。一方、同僚と飲みに行った場合は例外に当たらず、そこから先は通勤ではなくなります。
社長の場合は、そもそも対象かどうかから
答え: 事業主は労災保険の対象外なので、特別加入していなければ、業務災害でも通勤災害でも給付はありません。
根拠:厚生労働省の特別加入制度のしおりは、「労働者は、労災保険で保護されます」としたうえで、「特別加入の対象は『労働者以外の人』です。(任意加入)」としています[2]。
従業員については、業務災害か通勤災害かの区別が給付の内容に関わります。しかし社長自身については、その手前で対象かどうかが決まります。特別加入については社長は労災の対象外で扱っています。
従業員を雇っている以上、この区別を理解しておくことには意味があります。災害が起きたときに、業務災害として処理するのか、通勤災害として処理するのかで手続きが変わります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
よくある質問
Q. 在宅勤務中の怪我はどうなりますか? A. 在宅勤務の場合の取扱いについては、本記事で参照した資料の範囲を超えるため扱いません。所轄の労働基準監督署にご確認ください。
Q. 直行直帰の移動は通勤ですか? A. 通勤の範囲には「就業の場所から他の就業の場所への移動」が含まれます[1]。業務の性質を有するものは通勤から除かれます[1]。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。
Q. 会社の飲み会の帰りは通勤になりますか? A. 逸脱または中断に当たる場合、その間およびその後の移動は通勤となりません[1]。例外として挙げられているのは日用品の購入、職業訓練の受講、選挙の投票、医療の受診、介護です[1]。
Q. 業務災害と通勤災害で、給付の内容は違いますか? A. 給付の詳細については、本記事で参照した資料の範囲を超えるため扱いません。厚生労働省または労働基準監督署にご確認ください。
Q. 従業員の労災に備えて、会社として何ができますか? A. 労災保険の給付でまかなえない部分に備える方法があります。会社が負う賠償責任も含めて、考え方の整理は保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 厚生労働省「業務災害と通勤災害について」(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12_0002.pdf、2026-09-23参照)
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-5.pdf、2026-09-23参照)