退職したあと、健康保険はどうするか。任意継続・国民健康保険・被扶養者の三択
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
会社を辞めると健康保険の被保険者資格を失うため、次のどれかを選ぶことになります。一つ目が任意継続被保険者で、資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったことが要件です[1]。加入できるのは最大2年間で[1]、保険料は従前の標準報酬月額と、その保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担します[1]。在職中は会社と折半していた保険料を全額自分で負担する形になりますが、平均標準報酬月額を上回る報酬だった方は、低いほうが使われるため上限が効きます。二つ目が市区町村の国民健康保険です。保険料の計算方法は市区町村によって異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。三つ目が家族の被扶養者になる道です。被扶養者の認定では年収130万円が目安とされており[2]、人手不足への対応で働く時間を延ばしたことなどによる一時的な収入変動については、事業主の証明により引き続き被扶養者として認定される仕組みがあります[2][3]。
結論の一覧表
| 選択肢 | 主な要件・内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 任意継続被保険者の要件 | 資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったこと | [1] |
| 任意継続の期間 | 最大2年間。任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したときに資格を喪失 | [1] |
| 任意継続の保険料 | 従前の標準報酬月額、またはその保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額 | [1] |
| 国民健康保険 | 市区町村の制度。保険料の計算は市区町村ごとに異なる | — |
| 被扶養者の年収の目安 | 130万円 | [2] |
| 一時的な収入変動 | 働く時間を延ばしたことなどによる一時的な収入変動は、事業主が一時的な収入であることを証明することで、引き続き被扶養者として認定される | [2] |
任意継続は「2か月以上」と「2年間」
答え: 資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったことが要件で、加入できるのは最大2年間です。
根拠:厚生労働省の資料は、任意継続被保険者の要件として「資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったこと」を挙げています[1]。資格を喪失する事由として「任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき」などが示されています[1]。
2年で終わる制度です。定年退職から年金受給まで期間が空く場合、2年を過ぎた後は国民健康保険に移ることになります。最初から国民健康保険を選ぶか、2年だけ任意継続にするかは、保険料の比較で決まります。
手続きの期限については、本記事で参照した資料に記載がないため扱いません。加入していた健康保険の保険者にご確認ください。期限を過ぎると任意継続を選べなくなるため、退職が決まった時点で確認しておくことをおすすめします。
保険料は「いずれか低い額」で決まる
答え: 従前の標準報酬月額と、保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額の、低いほうが使われます。
根拠:厚生労働省は、任意継続被保険者の保険料について「①従前の標準報酬月額又は②当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額」を負担するとしています[1]。
ここに二つの意味があります。一つは、在職中は労使折半だった保険料を全額自分で負担するため、単純に負担が倍近くになること。もう一つは、報酬が高かった方には上限が効くことです。平均標準報酬月額を超えていた方は、その平均で計算されます。
国民健康保険の保険料は前年の所得などをもとに市区町村が計算します。退職した年の翌年は、在職中の所得で計算されるため高くなることがあります。どちらが安いかは個別に試算するしかありません。市区町村の窓口で国民健康保険料の見込みを聞き、任意継続の保険料と比べてください。
家族の被扶養者になる道もある
答え: 配偶者や子の健康保険の被扶養者になれる場合があります。年収130万円が目安です[2]。
根拠:厚生労働省の資料は、年収130万円以上になると国民年金・国民健康保険の保険料支払いにより手取り収入が減ってしまうという課題を示しています[2]。あわせて、年収130万円以上でも事業主の証明により引き続き被扶養者として認定される仕組みが導入されたとし、職場の人手不足に対応するため働く時間を延ばしたことなどによる一時的な収入変動が対象で、勤務先の事業主が一時的な収入であることを証明することになるとしています[2]。
この仕組みは、いまも働いている方の一時的な収入増を想定したものです[3]。退職後に被扶養者になれるかどうかの認定要件は、加入する健康保険の保険者が判断します。詳細は配偶者やお子さんの勤務先の保険者にご確認ください。
保険料の負担がないという点で、選べるなら被扶養者がいちばん軽くなります。まずここに該当するかを確認し、該当しなければ任意継続と国民健康保険を比べる、という順序が実際的です。
決める順番
答え: 被扶養者になれるか、次に任意継続と国民健康保険の保険料を比べる、という順です。
根拠:任意継続の保険料は従前の標準報酬月額または保険者の平均のいずれか低い額で計算され[1]、加入できるのは最大2年間です[1]。
退職の時期が決まったら、在職中に次の三つを確認しておくと動きが速くなります。加入していた保険者に任意継続の保険料と手続き期限を聞くこと。市区町村に国民健康保険料の見込みを聞くこと。家族の勤務先の保険者に被扶養者の認定要件を聞くこと。
失業給付を受ける場合、給付の開始までに待期7日と給付制限の期間があります。失業給付はいつから、いくら、何日分かをご覧ください。その間も健康保険料は発生します。
よくある質問
Q. 任意継続の保険料は途中で変わりますか? A. 保険料の算定方法は本記事のとおりです[1]。改定の取扱いについては保険者にご確認ください。
Q. 2年を待たずにやめられますか? A. 資格喪失の事由については、本記事で参照した資料に「任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき」などが示されています[1]。個別の取扱いは保険者にご確認ください。
Q. 扶養に入ると年金はどうなりますか? A. 健康保険の被扶養者と国民年金の第3号被保険者は別の判定です。日本年金機構または保険者にご確認ください。国民年金保険料を払えない場合の免除については国民年金を払えないときは、放置せず免除の申請ををご覧ください。
Q. 退職後に医療費が高額になったら? A. 高額療養費の制度があります。本記事で参照した資料の範囲を超えるため扱いませんが、医療費控除については医療費控除はどこまで対象かで扱っています。
Q. 民間の医療保険に入り直す必要はありますか? A. 公的な制度のどこが空くかを整理してから考えることになります。退職前後は、健康状態によって加入できる商品が変わることもあります。整理は保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 厚生労働省保険局「任意継続被保険者制度について」(第121回社会保障審議会医療保険部会 資料4、令和元年11月21日。https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000568743.pdf、2026-09-23参照)
- 厚生労働省「『130万円の壁』でお困りの皆さまへ」(https://www.mhlw.go.jp/content/001162154.pdf、2026-09-23参照)
- 厚生労働省「『年収の壁』への対応」(https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html、2026-09-23参照)