医療費控除はどこまで対象か。10万円の壁と、保険金を差し引く順番
基準日 2026年9月23日 ・ 確認 安井義幸
結論(要約回答)
医療費控除の額は、実際に支払った医療費の合計額から、保険金などで補填される金額を引き、さらに10万円を引いた額です。その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額を引きます。控除額の上限は200万円です[1]。ここで見落とされやすいのが差し引く順番で、保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引き、引ききれない金額が生じても他の医療費からは差し引きません[1]。入院給付金が入院費を上回っても、通院費まで減らす必要はないということです。対象になる費用は幅広く、通院費、入院の際の部屋代や食事代、おむつ代(医師の証明書が必要)まで含まれますが、健康診断や人間ドック、医師への謝礼金、公共交通機関が使える場合のタクシー代は対象外です[2]。ドラッグストアでの購入が中心なら、セルフメディケーション税制という選択肢もあります。こちらは12,000円を超える部分が対象で上限88,000円、通常の医療費控除との選択適用です[3]。
結論の一覧表
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 控除額の計算 | (実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円 | [1] |
| 総所得金額等が200万円未満の場合 | 10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額を差し引く | [1] |
| 控除額の上限 | 200万円 | [1] |
| 補填金の差し引き方 | その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引く。引ききれない分を他の医療費から差し引くことはしない | [1] |
| 対象になる主なもの | 診療・治療の対価、治療に必要な医薬品の購入費、通院費、入院の際の部屋代や食事代、あん摩・はり・きゅう等の施術、介護保険制度の自己負担額、おむつ代(医師の証明書が必要) | [2] |
| 対象にならない主なもの | 健康診断、人間ドック、医師への謝礼金、公共交通機関が使える場合のタクシー代、ガソリン代・駐車場代、予防目的の医薬品 | [2] |
| セルフメディケーション税制 | 特定一般用医薬品等購入費のうち12,000円を超える部分。上限88,000円。医療費控除との選択適用 | [3] |
10万円を引くのは最後。先に保険金を引く
答え: 支払った医療費から、まず保険金などの補填額を引き、そのあとで10万円を引きます[1]。
根拠:国税庁は、医療費控除の額を「(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額」とし、(1)を保険金などで補填される金額、(2)を10万円としています[1]。その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額です[1]。控除額の上限は200万円です[1]。
総所得金額等が200万円未満であれば、引く金額が10万円より小さくなるので[1]、控除を受けられる範囲が広がります。年金生活の親を扶養に入れている場合など、この5パーセントの扱いが効いてくることがあります。
保険金は「その医療費から」だけ引く
答え: 入院給付金は入院費から引きますが、引ききれなかった分を通院費や他の家族の医療費から引く必要はありません。
根拠:国税庁は「保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません」としています[1]。
ここは実務でよく間違えるところです。たとえば入院費が15万円で、入院給付金が20万円出た場合、差し引くのは入院費の15万円までです[1]。余った5万円を、同じ年の家族の歯科治療費や通院費から引く必要はありません。「保険金が出たから医療費控除は使えない」と思い込んで申告しない方がいますが、対象になる費用が他にあれば控除を受けられる場合があります。
なお、具体的な申告の可否や金額の計算は税理士にご確認ください。当サイトは個別の税務判断を行いません。
対象になるもの、ならないもの
答え: 治療のための費用は幅広く対象ですが、予防のための費用は対象外です。
根拠:国税庁が対象として挙げているのは、医師または歯科医師による診療または治療の対価(健康診断の費用は除く)、治療または療養に必要な医薬品の購入の対価、入院時の施設収容費、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術の対価、保健師や看護師等による療養上の世話の対価、助産師による分べんの介助の対価、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価、介護保険制度のもとで提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額などです[2]。
通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代、医療用器具等の購入や賃借のための費用(コルセット、義手、補聴器、眼鏡など)、おむつ代(医師の証明書が必要)も、直接必要な費用として対象とされています[2]。
対象にならないものとして挙げられているのは、健康診断や人間ドックの費用、医師等に対する謝礼金、公共交通機関が利用できる場合のタクシー代、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代、疲労回復や健康増進を目的とした医薬品(ビタミン剤など)や施術です[2]。
線引きの考え方は「治療か、予防か」です。健康診断は原則対象外ですが、その結果、重大な疾病が見つかって治療につながった場合の扱いなど、例外的な取扱いがあります。判断に迷う費用は、税務署または税理士にご確認ください。
ドラッグストア中心ならセルフメディケーション税制
答え: スイッチOTC医薬品等の購入費が12,000円を超える場合、その超えた部分が控除の対象になります。上限は88,000円です[3]。
根拠:国税庁は、セルフメディケーション税制について、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費から12,000円を差し引いた金額が控除額となり、最高88,000円が上限であるとしています[3]。保険金などで補填される部分は除きます[3]。対象となるのは、医療用医薬品から転用されたスイッチOTC医薬品等で、領収書に対象商品である旨が表示されているほか、パッケージに識別マークが掲載されているものもあります[3]。
適用を受けるには、申告する本人が、その年に健康診断、予防接種、定期健康診断、特定健康診査、がん検診のいずれかを受けている必要があります[3]。配偶者や扶養親族の受診は要件になっていません[3]。
そして重要な点として、これは通常の医療費控除との選択適用であり、両方を併用することはできません[3]。一度選択したあと、更正の請求や修正申告によって変更することも認められていません[3]。どちらが有利かは、その年に支払った医療費の総額によります。申告前に両方で計算してみてください。
よくある質問
Q. 家族の分もまとめられますか? A. 生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が対象になります[1]。誰の申告にまとめるかで控除の効き方が変わります。
Q. 高額療養費で払い戻された分はどう扱いますか? A. 保険金などで補填される金額として、その給付の目的となった医療費から差し引きます[1]。
Q. 介護にかかった費用も対象になりますか? A. 介護保険制度のもとで提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額や、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価が対象として挙げられています[2]。ただし施設の費用のうちどこまでが対象かは種類によって異なります。介護費用の全体像は親の介護費用は何で決まるか、施設の食費・居住費は施設の食費と居住費は上限の外にあるをご覧ください。
Q. 領収書は提出しますか? A. 提出方法や保存の要否は申告の方式によって異なります。国税庁のページまたは所轄の税務署にご確認ください。
Q. 医療保険に入っていると、医療費控除は使えなくなりますか? A. 使えなくなるわけではありません。給付金はその給付の目的となった医療費から差し引きますが、引ききれない分を他の医療費から差し引くことはしません[1]。給付金と控除の関係を踏まえたご契約の見直しは保険の相談についてからご相談ください。
出典
- 国税庁「タックスアンサーNo.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm、2026-09-23参照)
- 国税庁「タックスアンサーNo.1122 医療費控除の対象となる医療費」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm、2026-09-23参照)
- 国税庁「タックスアンサーNo.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm、2026-09-23参照)